餌付け禁止法について

餌付けが全面禁止になりました
1999年2月12日、州の土地自然資源局はハナウマベイでの餌付け行為を禁止する新規定を採択しました。その後、州検事局の審議を経て州知事の署名を得、4月15日に正式に法律として発効しました。
その後市が10万ドルを支出して学者グループにより「ハナウマ湾の環境を維持していくには1日あたりどれくらいの入場者数が適正か」といった本格的な湾内の生態環境調査が行われ、1999年11月1日からこの法律が施行されました。今後、この法律に違反すると$1000以下の罰金及び(若しくは)30日間の実刑が課せられます。

ハナウマベイで人々が魚に餌を与えるようになったのは70年代中頃だと言われています。その後、パンや弁当の食べ残し、スナック菓子などを魚に与える人が後を断たず、大きな魚ばかりが集まるようになってしまったため、今回の法律が設けられることになったようです。新規定の狙いは、大きな魚(ミナミイスズミやボラなど)に追いやられてしまった魚を呼び戻し、本来のバランスのとれた自然環境に戻すことだそうです。また、同時に湾内の水質向上も期待されています。

ハナウマボーイもこの法律の施行に賛成です。餌に群がる魚を見るよりも自然の姿の魚を見ている方が楽しいからです。ちなみに「ハナウマベイの生き物」のページに掲載している写真はミナミイスズミを除き、餌を用いずに自然のままの魚の姿を撮影したものです。

「餌付け禁止法」が設けられた理由
先日、ビジターセンターでハナウマベイに関する教育に携わっているスペシャリスト、ハワイ大学のJeffrey Kuwabaraさんから餌付け禁止法に関するお手紙を頂きました。
餌付け禁止法を設けた理由は沢山あるのだそうですが、そのうちの幾つかを「日本から来る人にも是非知って欲しい」ということなのでここで紹介します。

〜餌付け禁止法が設けられた理由〜

  1. 餌付けをすることにより、私たちは魚の生活と住む場所を変えてしまうことになる。例えば、本来岩礁の内側にはいないミナミイスズミが岩礁内に大量に生息するようになってしまった。
  2. 餌付けで怪我をすることがあり危ない。幾つかの魚は餌が海に撒かれるととても攻撃的になる。我を忘れて餌と手の区別がつかなくなった魚は、人の手を噛んでしまうことがある。ハナウマベイでは毎日、誰かが必ず手を噛まている。魚の中には歯を持つ種もいて、噛まれると怪我をすることがあることを覚えておいて欲しい。
  3. 餌は魚の健康にとって好ましくない。養殖用に作られた魚の餌は、ハナウマベイに住む魚の健康を維持するのに必要な栄養素の全ては含んでいないから。
  4. 餌付けは生態系のバランスを崩してしまう。餌付けをすると湾が本来持っている力を超える数の魚が生息するようになり、これが湾全体に大きなストレスを与えてしまう。
  5. 餌付けは魚の観察を却って難しくしてしまう。シュノーケリングをすれば簡単に数多くの魚を目にすることが出来るが、餌付けでは2〜3種類の魚しか目にすることが出来ない。
  6. 餌の入っているビニール袋はハナウマベイの景観を損ねてしまうばかりでなく、海の生き物を危険にさらすことにもなる。
  7. 泳いだりシュノーケリングをしない人に餌を与える人が多いようで、岩礁(珊瑚礁)の上を歩いてダメージを与えてしまう傾向がより強い。
「餌付け禁止法」施行当日(99年11月1日)の様子
幸運(?)にも「餌付け禁止法」の施行日にハナウマベイを訪れることができました。

入園料を払うゲートに餌付け禁止を知らせる大きな看板でも出来るのかなと思いきや、特に変わった様子はありませんでした。その代わり、ボランティアの方や公園の職員の方がハナウマベイを訪れる観光客に「今日から餌付けは禁止ですよ〜」と説明していました。

これはハナウマベイでしてはいけない事を知らせる看板です。3行目に「FEEDING OF FISH」と書いてあります。3行目と4行目の間がやけに空いていてちっと変ですね。実は前日までここには「売店で売っている公認の餌は除く」と書いてありました。^^;

この看板を無視して魚に餌をあげると...
レンジャーに「ピー」と笛を吹かれます。さらにこれを無視して餌をあげつづけると逮捕されますのでご注意を。

餌付けが禁止なのは一般の観光客だけではありません。ダイビングツアーやスヌーバーツアーでも餌付けはできなくなります。

そこで「体験ダイビング挑戦記」でもお世話になった”PACIFIC ISLAND SCUBA"の泰造さんもひと工夫。餌付けをする代わりに魚の名前を書いたプレートを使って魚の名前がその場でわかるようにしました。
もともと魚は沢山いるので餌を使わなくても十分楽しいので心配御無用。

餌を使わずに魚を集める方法
「餌付けが出来ないなんてつまんない!」
そんな方の為に餌を使わずに魚を集める方法をお教えしましょう。餌をあげるより魚との駆け引きが楽しめるのでずっと面白いです。
ハナウマベイに
ミレットシードバタフライフィッシュという大変好奇心の強いハワイ固有の魚がいます。この魚の鼻先で餌をあげる振りをしましょう。そうするとあら不思議!つられて他の魚も集まってきます。
但し、決して
ミナミイスズミの目の前でやってはいけません。噛まれます。
小石を海の中でコンコンと打ち鳴らしても魚が集まって来ます。
魚が消えた!?
ハナウマベイで餌付けが禁止されてから1年余り経ちました。この間4回ほどハワイに渡りハナウマベイを観察してきましたが、その結果は如何に。
まず、波打ち際の魚の数はかなり減りました。もともと波打ち際には魚の好む食べ物が少なく、餌付けが禁止された結果、魚は本来の餌場に戻って行ったようです。という事で、昔のハナウマベイを想像してやって来ると「なんだ?魚いないじゃん!」という事になります。

が、ご安心あれ。魚は本来の餌場、すなわち「岩礁」の周りにいます。また、かつては力の強い魚ばかりが極端に湾内に繁殖していましたが、今はこの偏りが解消されつつあります。
Let'sシュノーケル
のコーナーを参考に色々なエリアを泳いでみてください。きっと今までよりも多くの種類の魚を見る事ができるでしょう。ここにはもう噛み付く魚はいません。

これは一体何?
ビーチの左側の岩礁の上に浮かぶ巨大な8角形のフラフープ...
これは人が餌を与え続けた結果、どれほどハナウマベイに影響を与えていたかを調べるための生簀(いけす)です。直径5メートルほどの浮きの下は網で仕切られていて、魚が飼われています。餌によって増えすぎてしまった草食性の魚や、岩礁の上を歩いてしまう人間は中に入ることは出来ません。
この生簀は2000年4月に設置され、海草の生長状態などが調査されています。
ハナウマベイではこの他、餌付けで異常に増えてしまった
ミナミイスズミなどに目印をつけ、餌付け禁止後の減少度を継続的に調査しています。
環境調査の結果まとまる

【人が訪れる事による環境への影響は?】
ハナウマベイを訪れる人々が環境にどのような影響を与えているのかといった調査が99年の夏から約1年間続けられてきました。その調査結果がこの度纏まりました。
研究を続けてきたRichard Brock博士(ボランティアグループ”Friend of Hanauma Bay”の代表でもあります)の調査報告書によると、以下のことが分かったそうです。

  • ハナウマベイを訪れる人のうち海の中に入るのは33.5%の人であり、岩礁の外に泳ぎ出る人は1.4%に過ぎない。
  • 水質調査の項目として窒素・リン・珪酸の量を測定した。その結果、ハナウマベイではこれらが通常よりも高いことが分かった。特に波打ち際ではその傾向が強い。この結果はシャワーの利用による真水の流入(珪酸の値)は指し示すが下水の流入を示すものではない。
  • 不幸にも、窒素についてはアンモニアという形でその50%が人から放出されている。これはトイレを利用しないことが原因である。また、20%は餌付けによるもの(99年11月から禁止)で、残りの30%は海洋生物によって放出されている。

【ハナウマボーイの感想】
まず、”岩礁の外に泳ぎ出る人は1.4%”という数字を見て「へーっそんなに少ないの?」と正直驚きました。現在毎日平均3,300人が訪れますからわずか46人ということになります。
(ちなみに入園者数抑制策施行前の1980年代は何と!毎日平均1万人も訪れていました。)
岩礁の内と外とでは珊瑚の量や生き物の多様性がガラッと変わります。ハナウマベイが紹介される時、その多くが岩礁内の極めて限られた海域であるのもうなずけます。ちょっと残念な気分。でも、安全最優先!無理して岩礁の外に出るこたぁありません。

次に、窒素放出の半分が人によるものと聞いて「えっ、そんなに?」とこれまた驚きました。しかしここで疑問が...果たしてこれはハナウマベイの生態系にどんな影響があるのか。そこでまたまたハワイ大学のKuwabaraさんに聞いてみました。すると...

「うーん、難しい質問だね。一般的に窒素は海を富栄養状態にするんだ。そうすると海草が茂り過ぎて珊瑚を負かしてしまう。でも、現状そこまでの窒素の放出量だとは思わないけどね。幸い、ハナウマベイは海流の影響で放出された窒素は湾の外に出て行きやすいし。
その昔、カネオヘ(オアフの北側にある湾)という所で下水が湾に流れ込んでいた時期があってね。海水の入れ替わりが少ないということもあって海草が生い茂り、珊瑚が減ってしまったという事があったんだよ。今は改善されつつあるけどね。
今の所残念ながら窒素増加によるハナウマベイへの影響を裏付ける科学的な確証が無いんだ。でもね、これだけは言えると思う。
海の中に窒素を出すよりもトイレの中に出した方が良いって事だけはね。

ハナウマボーイもそう思います。シュノーケリングをする前にトイレに行きましょう。海の中では身体が冷えてすぐオシッコしたくなりますから(^_^;)

 


(餌付けがOKだった頃の説明です。ご参考までに...)
失敗しない餌のあげ方

えさをあげるにもちょっとしたコツが必要。間違ったあげ方をするとけがをすることもあります。

魚のえさ
これがハナウマベイの売店で売っている魚の餌です。その名も「SNORKEL FISH FOOD」。そのまんまです。味はなく、ニオイもあまり強くありません。

パッケージによれば、原料は
・海の副産物 (←味見しちゃったけど大丈夫かな ^_^;)
・大豆
・穀物
・ビタミン
だそうで、「バランス栄養食」と書いてありました。

えさのあげ方
まず、下が砂地でなるべく水の澄んだ場所を探します。近くに岩礁があるところがベストです。ハナウマボーイのオススメは海に向ってビーチの左サイドです。
お目当ての魚を見つけたら
なるべく身体から離れたところに餌を少しずつまきましょう。群れを作る習性がある魚なら同じ種類の魚が沢山集まってきます。
(モデル:ハナウマボーイの兄・ハワイカイゴルフコースマネージャー)
注意:
素手で魚に直接餌をあげないようにしてください。
魚の中には歯があるものもいて、ふとした拍子に噛まれることがあります。特にチビッコ連れの方、ご注意ください。
えさを撒くと海の中はこんな感じになります。
集まっているのはシマハギです。

サッとえさをあげて場所を変えるのがコツです。長い時間同じ場所でえさをまき続けると、やがて力の強い大きな魚ばかり集まってきます。魚は利口なので誰が餌をまいているのか知っていて、そのうち足元を回り始めます。待ちきれなくなった魚が餌を欲しがってスネを齧りますのでご注意を。